ティヴォリのエステ家別荘は、ローマ郊外の丘の町ティヴォリにある16世紀ルネサンスの宮殿と噴水庭園で、ヨーロッパの庭園に影響を与えた「水の庭園」として世界遺産に登録されています。ローマから地下鉄とバスで訪れ、噴水をたどって庭園を下った記録を、動画・写真・解説付きでまとめています。
修道院だった宮殿と、噴水の庭園
日本の三名園のような位置づけの、影響力の大きい庭園です。もともと山の上の修道院だった建物を宮殿に変えたもので、内部には教会だった名残が多く残り、高台からローマの市街を一望できます。標高が高いのでローマよりずっと肌寒く、庭に入るとあらゆる場所から噴水の水音が聞こえます。
噴水にはそれぞれ名前がついていて、合わせて500ほどあると現地で知りました。宮殿のある高い場所から急な斜面を下る構造で、その高低差による水圧で噴水が動いています。有名なオルガンの噴水は水圧でオルガンが自動演奏される仕掛けで、10時半から2時間おきの演奏に間に合わず、30秒ほどかすかに聞こえただけでした。
一番下まで降りると、滝と見まがう巨大なネプチューンの噴水があり、その上にオルガンの噴水、中央に竜の噴水、そこへ至る道に「百の噴水」が並びます。左右対称に噴水を配して調和をとる設計で、日本庭園の不規則さとは対照的でした。この庭園はヴェルサイユをはじめヨーロッパ各地の庭園の手本になったとされています。
UNESCOの登録理由では、エステ家別荘は1550年にティヴォリ総督となった枢機卿イッポーリト2世・デステのために、ピッロ・リゴーリオが設計しました。宮殿と庭園は、修道院の建物を使ったため平面が不規則です。1560年から噴水のための水を確保し、庭園の高低差がつくる重力で水を流して噴水や水盤、洞窟をつくりました。庭園は2つの急斜面に広がり、宮殿のロッジアを中心軸に、5本の横軸がそれぞれ噴水で終わります。最初の水力自動装置を備えた水利工学の傑作で、17世紀にはベルニーニの設計で「大杯の噴水」が加えられました[1]。
ティヴォリまでの道のり
ローマの地下鉄の最寄り駅からティヴォリへ向かうバスは券売機が壊れていて切符が買えず、運転手に聞くと帰ってきてから買ってくれと言われました。イタリアでは公共交通が時間どおりに来ないことが多く、営業時間の表示も当てにならないので、頼りになるのはGPSだけでした。ティヴォリは山の上にあり、ここから徒歩1時間ほどの場所にもう一つの世界遺産ハドリアヌス別荘があるので、歩いて向かいました。
世界遺産データ:ティヴォリのエステ家別荘
ティヴォリのエステ家別荘は2001年に世界遺産に登録されました。登録基準は(i)(ii)(iii)(iv)(vi)で、ルネサンス文化の最も洗練された例であること、ヨーロッパ全体の庭園設計に深い影響を与えたこと、最初期の「驚異の庭園」であることが理由です。宮殿の下にはローマ時代の別荘と修道院の遺構が今も見え、庭園の空間構成と装飾の大部分が保たれています。1920年からイタリア政府の所有で、微気候による装飾と噴水の劣化に対して修復が続けられています[1]。
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- (i)人類の創造的才能を表す傑作
- (ii)建築・技術・都市計画・景観設計における価値観の交流
- (iii)文化的伝統や文明の、比類のない証拠
- (iv)人類の歴史の重要な段階を示す建築・技術・景観の見本
- (vi)普遍的な意義をもつ出来事・伝統・思想・信仰・芸術との関連